2010年12月21日火曜日

撮影マナーについて

都市公園で野鳥の写真を撮るようになって、まもなく一年になる。思わぬ珍しい野鳥が居るのをみつけてわくわくしたり、きれいな姿にうっとりしたりの連続だった。まさかオオタカに逢えるとも思わなかった。

しかし、ここにきて少し考える事が出てきた。マナーの問題だ。

大自然の中に入って野鳥の写真を撮る場合は、周囲に居る人に対する配慮はそれほどしなくても大丈夫。なぜならきっと誰も居ないから。とは言っても無思慮な餌付けとかは絶対に避けるべきだし、営巣している巣のそばには絶対に近づかないなど、バーダーとしてのマナーは絶対に守るべきだ。

加えて都市公園の場合、そこには多数の人々が集っている。その多くは巨大な望遠レンズが何かなど全く知らないし野鳥のことなど全く興味ない。そのような人々にとって、500mm、600mm・・・などというレンズの持つ威圧感は大変なものだろう。そのようなレンズの放列がスズメみたいな鳥に向けて何本も並ぶ様子は、恐怖すら感じる可能性がある。そういう人たちもそこには居るということに対する配慮も写真愛好家は欠かしてはならない。

都市公園の池にカワセミを見つけた。カワセミにレンズを向けている。そこしかピントが合わない。そう理解するのは写真愛好家だけだ。それ以外の人はそのレンズが池の向こうから自分に向けられているのを見れば場合によってはストーカーと勘違いされてもおかしくない。巨大なレンズと三脚を多くの人が通る道に遠慮会釈なしに置いて、その道の反対側に折りたたみ椅子を置いて、鳥が来るのを待つ。それは人里離れた野外ならいざ知らず、都市公園ではそれを邪魔に思うランナーも居るだろう。そのカメラマンの前を通って良いのかどうか迷う散歩愛好者も居るはずだ。ましてや立ち入り禁止の場所に三脚を据え付けて、カメラマンは立ち入っていないから良いなどという考えは常識を外れていると思われても仕方がない。

たとえば、写真愛好家では無い方から「何をされているのですか」と、好奇の目を寄せられたらとりあえず野鳥を追うのをやめて何をしているのか丁寧に話す。もし手元に撮影した写真があるのならそれをお見せする。そのような交流にも気を配り様々な人々が、そしてそこに顔を出してくれる自然とともに共棲できるように計らうのは最低限のマナーだ。様々な人に都市公園の自然を知ってもらい、互いにそれを尊重するきっかけになるのなら、それはすばらしいことだ。

私もここに来てようやくそういうことを感じられるようになってきた。これまで気づかぬうちに不快な思いをさせてしまった事もあるかもしれない。これからも、もしかすると繰り返してしまうかもしれない。少なくともそのような事に対する感度を上げたく思う。

2010年8月3日火曜日

被写界深度を説明してみる

自分なりに被写界深度の事を説明してみようと思います。少しでも写真に感心を持った人なら「被写界深度」という言葉を聞いたはず。で、「絞りを小さくすると被写界深度が深くなる」逆に「絞りを大きく開けると被写界深度が浅くなる」とか聞いたことがあるのでは。カメラには入ってくる光の量を調整する「絞り」というものが付いています。猫の目のことを思い出してください。暗いところでは瞳が大きく開いていますよね。逆に明るい所だと何でこんなに細くなるのかと思うくらい細くなる、そう瞳孔に相当するのが絞りです。


野鳥の写真を撮ろうとすると速いシャッター速度で鳥の動きを止めたい。するとシャッターが開いている時間が短いためにカメラに入ってくる光の量が少ない。するとどうしても絞りを大きく開けたくなる。それが下の図の上側に相当します。レンズを通って撮像素子(フィルム)で像を結ぶわけですが、その前後に「まあこのくらいだったらピントが合っていると思っても良いな」と思う範囲。絞りが大きく開いているとその範囲がとても短くなっているのが判るかと思います。つまり、被写体への距離をちょっと間違えただけでピントがぼけてしまうのです。
それに対して下側は光が入ってくる穴がとても小さくなっている。すると撮像素子に向かう光の束も細くなる。その結果、「まあこのくらいだったらピントが合っている」と思える範囲がグッと広くなるのです。その分、ちょっとくらい距離をミスしたからと言ってピントがぼけているようには感じにくくなってしまうんですよね。(んん?絞りの位置とレンズの位置が逆か?)


絞りを絞った状態。


だんだん絞りを開く。


これが全開状態。

全開状態にすると光がたくさん入る、一目瞭然ですよね。でも光を通さない状態も被写界深度を稼げるという大きなメリットがあります。明るすぎるときの対策も勿論。

これを上手く使うと写真を撮ったときの奥行きの表現などに使えるわけですね。


これは野鳥の写真ではないです。ヒトリシズカという春に咲く野草の写真ですが、絞りを思い切り開けた結果一つの花にしかピントが合っていないですよね。

これは藪の中に隠れたアオジです。植物の緑が完全にぼけてその先にアオジの顔がくっきりと出てくる。そんな効果も狙えるはず。こうして自分が撮影したい対象を引き立たせることができるのが絞りのもう一つの効果です。

2010年6月28日月曜日

双眼鏡について

双眼鏡。これはぜひ欲しい道具の一つです。倍率が高い方が良いと思いますか? 倍率が高いとかえって使いにくいようです。多くの方が8~10倍程度の倍率を。但し対物レンズの口径の大きなもの、つまりより多くの光を取り込めるものが良いようです。私は、PENTAXのアーバネットMC II(8倍、対物レンズ径25mm)を使っています。大体15,000円程度で購入できると思います。対物レンズの口径は小さめですが、防滴構造で小型なのが有り難いです。

こんな感じで使います。
 「あれっ、芝草の中に樹の切り株みたいなものが有るぞ。あれは何だ?」双眼鏡はそのようなときに使います。目視で確認できないターゲットを双眼鏡で見つけるのは難しい。まずは目視であらかじめターゲットの目星をつけてから双眼鏡に手を伸ばすのが良いようです。

でも、正直に言います。私は間違えていました

あれは何だ?・・・これは間違い!漫画では双眼鏡を覗くとこのように見えるように表現される事が多いですよね。これ、間違いなんです。左右の筒の間隔を双眼鏡は調整できます。それを瞳の間隔に合わせるのです。どうするかって?このような見え方から次のように見えるように調整します。

あれは何だ?・・・これが正解。もちろん距離も合わせてください。意外とこの誤解をしている人って多いのではないでしょうか。

使い慣れてくると、まず肉眼でターゲットを見つめる。その視線の方向を動かさずに双眼鏡を構えてターゲットを観察する。それが出来るようになればしめたものです。



で、これは何だったか。とりさんでした。

写真をトリミングしてみました。そうです、これはトラツグミですね。実際にこのトラツグミを見つけたときには双眼鏡が大活躍しました。
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2010年6月27日日曜日

野鳥の写真を撮影する愉しみ

鳥の写真を撮影する。これはさまざまな人々にお奨め出来る趣味です。

普段忘れがちな自然の存在に触れる。そしてそれを写真という形で記録する。写真の技量を磨いてより多くの人に楽しんでもらう。自然のすばらしさ、美しさ、尊さを少しでも多くの人に知ってもらう。四季の移ろいを知り、日本というかけがえの無い土地の価値を感じる。渡り鳥の旅を想像しながら地球環境とのつながりを感じ取る。あらゆる価値観をそこから見いだせるはずです。

「そんな、遠くの海や山へ、野原へ出かけるのは大変ですから」

何をおっしゃいます。野鳥は意外と身近に居ますよ。よく見かけるスズメ、ヒヨドリ、ムクドリ・・・よく見るとハシブトガラス、ハシボソガラスだって単なる真っ黒な鳥ではありません。それどころか、カワセミ、ジョウビタキ、ツグミ、コゲラ、コサギ・・・都会の中の公園でも意外と見つかりますよ。週末だけでも充分に楽しめます。ただ、野鳥は概して早起きです。夜明けから午前中が良い時間です。そこは頑張りましょう。

思いもしなかった美しい姿が目の前に現れたとき、そしてそれがファインダーの中に飛び込んできたとき。その瞬間をシャッターに納められたとき。その作品を見ながらその先を夢見るとき。どれも至福の時間です。ふと聞こえてきた美しいさえずり、その声の主を見つけたときの興奮。それが少し前から図鑑で見ていた野鳥だった。少年・少女の大切な時間に戻り新たな活力を得る。少年・少女の諸君には一生のかけがえのない体験になることもあるかも知れません。そう、少し野鳥のことがわかってきたら子供たちにもおしえてあげましょう。

それだけではありません。野鳥を求めて知らない間に歩数計の数値もどんどん上がっていく、そんなことにきづいた人も居ます。一日に一万歩、それは普通の生活ではなかなか達成できないでしょう。それが早朝から午前中いっぱい野鳥の姿を求め続ければ、きっと一万歩なんて簡単に越えられますよ。夏の暑い季節の熱射病や厳冬期に風邪をひく、そんなことのないように。

また、人との出会いも。おそらく隣で見知らぬ人が野鳥の写真を撮影していることもあるでしょう。ちょっと声をかけてみる、その人のノウハウを教えてもらう。もしかしたら近くの良い場所を教えてくれるかもしれません。

写真の技術としても望遠を中心に動きのある被写体をどう表現するか。カメラやレンズの長所をどうやって引き出すか。自身の持つイメージに作品をいかに近づけていくか。費用がかかるのではないかという心配ですか。確かにカメラもレンズも安いものではありません。しかし、実際には車検切れ間近の中古車を購入する程度の予算でもそれなりの機材を揃えることは可能です。しかも時代はデジタルです。以前はフィルム代、現像・焼き増し代もかさみました。今は一秒20枚の連写をおもいきりやったとしても、大容量のメモリーカードにどんどん記録できます。メモリーカードは何度も何度も繰り返し使えます。しかも数千円しかしません。

さらに、インターネットを使えば世界に向けて今すぐにでも個展を開くことができる、今やそんな時代です。ブログで観察日記を書くのも面白そうですね。

但し、プロを目指すのは、もっと深く考えるべき要素があります。その作品で家族を(自分自身を)養えるのか。機材の保守は出来るのか。設備投資は、投資回収は。消費者の求める作品を作ることができるか。発注主の意向に従い、厳しい条件のもとでも成果を出せるか。作品の良さをきちんと消費者に訴える(マーケティング)ことができるのか。そして何よりもネイチャーフォトグラファーはたくさん居ます。競争に勝ち抜けるか。プロを目指すのならばそれにふさわしい修行と支えていただく仕組みが要ります。

このブログは、あくまでもアマチュアとして野鳥の写真撮影を楽しむ視点から書きます。何と言っても私は駆け出しのアマチュアですから。

どんな機材を使う?

カメラ、今ならデジタルカメラでしょう。もちろん今も銀塩フィルムカメラを愛用している方もいるでしょう。でもやはりデジタルカメラの方が明らかにいくつも良い点があります。たとえば一秒間に数コマ~20コマもの連写が気軽に使えるなんていうのはデジタル一眼レフならではです。

私は、はじめはこのような機材から始めました。

カメラ本体 : HOYA (PENTAX) K-20D

これを書いている時点では既にこの次のモデル、K-7が出ています。K-7はK20Dに比べて連写の性能が上がっているなど好都合な点がいくつかあります。K-7は本体価格、8万円程度のようです。メモリーカードは16GBのSDカード、5千円くらいでしょうか。

レンズ : 望遠ズームレンズ、DA55-300mmF4-5.8ED

やはり300mmの望遠は欲しいところです。このレンズは価格設定も安く重量も軽いレンズです。価格は3万円程度です。入門用としてとても手頃です。しかし、今は、このレンズは常用はしていません。問題は5.8という数字にあります。後に明るさが足りないと思うようになりました。異論もあるようですが、私はレンズの保護のためプロテクター(レンズの外に装着する素通しのガラス)を装着しています。5千円程度でしょうか。

カワセミならばこのような写真が撮れます。

コゲラ、という日本最小のキツツキ。
この野鳥も都会の公園でも見つかりますよ!


小さいですか?でもトリミング(写真の一部を切り出して拡大する)すればこうなります!

三脚・一脚

三脚、一脚は軽量のものを使っています。現在は一脚を使う事の方が多いです。価格は1万円程度でしょうか。

ですので、合計13万円くらいの投資で始められるわけです。このカメラなら他の被写体も狙いたくなるでしょう。そうしたら本体ボディーのみではなく標準系のズームレンズを持っていると愉しいでしょう。

PENTAX以外はどうか。ニコン、キヤノン、ソニー・・・これらのデジタル一眼レフカメラももちろんOK。ただ、私は昔からPENTAXを使っているので、ただそれだけの理由です。実はPENTAXは純正品では300mmを越える望遠レンズのラインナップが無い。一方ニコン、キヤノン、ソニーにはそれが有る。将来30万円、70万円、さらには数百万円もする高級レンズを使う気になっているのなら、PENTAXという選択肢は弱いです。PENTAXではそのような泥沼(?)に入り込む危険が低い。家庭内の財務大臣との折衝には有効かもしれませんよ。

コンパクトデジタルカメラはどうか。確かに300mmに近い望遠機能を持つものもあります。試したことが無いのではっきりした事は言いにくいのですが、液晶モニターでちゃんとピントが合っていることを確認出来るのか。オートフォーカスでちゃんと野鳥の姿を捉えることができるのかなど、ちょっと判らない。

地上望遠鏡(スポッティングスコープ)とコンパクトデジタルカメラを組み合わせるという可能性もあります。これは初心者の段階を脱して、野鳥観察や写真撮影を長く続ける気持ちになったときに考えれば良いでしょう。デジタル一眼レフカメラを使う時も上記のようなレンズより良いものを使うのも同様、この趣味を長く続ける気持ちになってからでも遅くないでしょう。

2010年6月26日土曜日

野鳥が見つからなければ話にならない。でもきっとカワセミはいる!

野鳥の写真を撮ろうとしても野鳥が見つからなければ話になりません。私の場合それは2010年1月3日の事でした。自宅の近所の大きな池がある公園。大都市からさほど離れていないこの公園でカワセミを見つけた事から始まりました。

たとえば東京都内でも目黒の自然教育園、洗足池など様々な場所でカワセミの棲息が確認されています。黒田(紀宮)清子さんは赤坂御用地でカワセミの繁殖を観察し、論文にまとめています。意外と野鳥は身近に居るのです。

このカワセミ、野鳥の写真の入門に好都合な被写体でしょう。それはなぜか。
  1. 都会でも比較的簡単に見つけることができる。
  2. 一年中観察することができる。
  3. そもそもとても綺麗な野鳥で撮り甲斐がある。
  4. あまり小さすぎず、また静止している事もしばしばあるので撮りやすい。
  5. その一方で、狩猟の瞬間はとてもダイナミックでその瞬間が撮れた満足感はたまらない。
  6. 探しやすい所に居ることが多い。
  7. ファンが多く見本となる作品も多い
入門には好都合な被写体なのです。私もカワセミの写真を撮りはじめて一ヶ月後にはこの程度の写真は撮れるようになりました。


「あぶない、カワセミ写真の泥沼に入ってはいけません」

えっ、そんなこと書いてありますか?

でも、野鳥の写真撮影を始める時に必ず心がけたいことがあります。それはバードウオッチャーとしてのマナーです。日本野鳥の会のバードウオッチングを始める人向けのガイドはとても参考になります。必ず読みましょう。それからカメラマンとしてのマナーも。たとえば他の人がカメラを構えている前に遠慮会釈無しで入り込むとかは、やめたい事です。また公園にしても海岸、野山にもそこには野鳥の写真を撮る事など一切感心が無い、でもその場所で楽しんでいる方もたくさん居ます。そのような人に迷惑となる行為は決してしないように。

ところで、野鳥を探すコツを学ぶのに、日本野鳥の会が各地で開催している探鳥会に参加する、これは是非ともお奨めします。なにか気むずかしそうな野鳥の達人に取り囲まれて・・・。いえ、そんな心配はきっと無用です。

カワセミだけではありません。今、都会には様々な野鳥が戻ってきています。オオタカだって東京都内でも見つかるんですよ。しかも、比較的簡単に見つかるところさえあります。こんどの休日、とりさんを探しに散歩、それから始めてみませんか。